宇祖田都子の短歌の話

森羅万象を三十一音に

たにゆめ杯3 のこと 

2022年6月26日(日)正午 たにゆめ杯3 の選考結果が公開されました。

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たにゆめ杯は今回で3回目。わたしの応募も3回目です。(過去二回分につきましてはこちらのブログでとりあげておりますので、よろしければご笑覧下さい)

 

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今回も「選外」でしたが、他人が見た夢の話 様に票をいただけてこんなにうれしいことはありません。次回も絶対に応募しようと思っています。

たにゆめ杯@CorpTnym
 
さて、
今回わたしは、連作のタイトルを『引っぱる力』にしました。
 

当初は、ギリシア神話などに登場する妖精「エコー」に纏わるものにしようとしていて、その際にざっと作った短歌は以下のようなものでした。

溢れ出す想いをオウム返しするエコーの姿を描いたカルタ

駅前のロータリーにはユニコーン青いフィルムに残った波紋

静寂が木霊するプラットホーム頭痛と飛行機雲のリピート

洋食の出前を運ぶ路線バス第九を歌うピエロな僕ら

噴水がケサランパサラン射出して卑猥な形にミルククラウン

ドーナツに三角定規で描いた山羊高い足場を引っぱる力

複雑な方程式とビワのジャム裏の空地の立体交差

水晶の群れの真昼の摩天楼噴水だった頃の想い出

姿見を零れてしまう皮膚の下リボンをまいた時間観念

頂点で光る忌むべき蟲の翅夏空を研ぐソニックウェーブ

水槽のカスタネットとゴム鞠を結ぶピンクのリボンの波紋

反射、反復、リフレイン。そんなイメージを集めたつもりだったのですが、神話、妖精という物語にはおさまりそうもなく、「意味」を問われれば「?」とならざるをえない歌が多かったのです。

そんななか「引っぱる力」という言葉が妙に引っかかりました。

それは、引力、重力、愛、憎しみ、未練、共感、時間、などを包括する、いわば存在を存在たらしめる力であり、命の源といえる根源的な力ではないのか。

そして推敲した結果が応募作品になったのでした。

水晶の群れの蠢く摩天楼それは幻だった噴水

ゴム鞠をマーガレットの草原に投げ込むとターミナルになった

洋食の出前を運ぶ路線バス産婦人科を経由したシェフ

複雑な方程式と枇杷のジャム出逢いは立体交差の下で

頂点で光る忌むべき虫たちのソニックウェーブは夏空を研ぐ

ドーナツに三角定規で山羊を描くグレートウォールを引っぱる力

ビオトープの池にケサランパサランが落ちた刹那のミルククラウン

ユニコーンを抱えた人はどこまでも白い菫をこぼし続ける

ギャロップがプラットホームに谺する飛行機雲が頭痛を癒す

ガス管を望遠鏡に接続し時計に結んだリボンをほどく

 

以上が、たにゆめ杯3 への参加の顛末です。

受賞作をゆっくりと読み、好きな歌を抜書する至福の時をすごしつつ、これからも短歌に親しんでいきたいと思います。

それでは。