宇祖田都子の短歌の話

森羅万象を三十一音に

#うたそら 屋上獏部 八首と、ナナコ(連作継続中)

【短歌誌「うたそら」が完成しました!】 PDF(スマホPC閲覧用、コンビニ印刷用面付け版)は以下のサイトからDLしていただけます。 http://kohagiuta.com/utasora/01/ B5サイズ/56Pの冊子となります。211名の1371首の短歌をお楽しみください

引用元:千原こはぎ@kohagi_twさん午後5:49 · 2021年3月1日 より

こちらの短歌誌の八首連作の部へ『屋上獏部』を投稿しました。まずは、「うたそら」をご覧いただき、その迫力に度肝を抜かれてほしいのです。

今後も、連作の部へ「屋上獏部」の投稿を継続していこうと思っています。今回はその八首を転載いたします。

また、この連作の前身ともいえる「ナナコ」についても継続していきたいと思っているので、これまでの短歌をここにまとめておこうと思います。

それでは、まず『屋上獏部』からどうぞ。

『屋上獏部』

  うたそら1 2021年3月へ投稿

合鍵を渡されてより先輩を部長と呼べば獏部員なり

踊り場に白犀のいる階段を上りつめれば部室の扉

合鍵のざらつき方が昨晩の夢の黄砂に似てる屋上

でこぼこの伝言板に『ビー玉が砂にまみれてます』の消し跡

一昼夜部室に放置した壜に金魚一匹泳いでる朝

屋上で芋を焼いたりする部長マスターキーをもてあそびつつ

部長からマスターキーを託されて合鍵を元部長に渡す

白犀の眠りを妨げぬために継承される屋上獏部

ナナコ(2021年1月6日~3月14日現在)

高校になかった屋上でのことを話し始めた電話のナナコ

ねころんだナナコの横へ三角に座ることしかできない空だ

来るときにフレッシュティント買ってきて ナナコはモデルもわたしに頼む

屋上へ丸ごと一個持ち込んだ西瓜と西瓜割りするバット

背泳ぎは苦手だけれど屋上のナナコが揺れて見えるのが好き

屋上にいつもナナコは先にいて一人になれないわたしを笑う

ナナコはね尖がってるけどイヤリングピアスで貫くのは嫌だって

大げんかした日ナナコが屋上で八朔の汁とばした『パンセ』

三限の漢文抜けて保健室ナナコは無論屋上にいる

保健室から屋上へ連れ出してくれたナナコにEVEを届ける

薬物に詳しいけれどキノコなどみんな一緒と言い切るナナコ

「国王は君臨すれども統治せず」ナナコが屋上を好きなワケ

屋上は最果てにして中間に位置する納沙布岬の響き

屋上に行く前に目を洗おうと言われてそれもいいかと思う

屋上とダムは似ていて学校にダムがないから屋上にいる

水色は機械仕掛けのサーカスが屋上に張るはずの天幕

古ぼけたピアノの蓋を開けたから屋上からのおみくじは吉

屋上が屋上だけが水没しナナコが脱いだ靴下が浮く

屋上の鍵当番を任されて今日は絶対早退しない

あなたたちよく似た手相してるわねと言われて爪を噛んでたナナコ

学校に屋上があり 端っこの真ん中歩く同盟 結ぶ

屋上にひっくりかえった金魚鉢水も金魚ももう乾いてる

屋上で一番初めに見た雪は何色だった? と笑ったナナコ

先日、『現代短歌集 第十七集』筑摩文庫 を読んでいて、それは昭和55年から63年までに発刊された歌集のアンソロジーなのですが、やっぱり俵万智さんの『サラダ記念日』は、オーパーツかっていうくらいすごかったな、という印象と、今野寿美さんの『花絆』が素晴らしいなと思いました。今野さんの、現実の風景や仕草が幻影の入り口になる感じ。短歌に取り入れていきたいと思います。それでは。