令和三年六月自選短歌 五首
短歌なんだから短歌を作りたいと切実に思いながら短歌ではなく散文で、文意で伝えようとしてしまう。言葉に馴れすぎているという自覚。もっと言葉の使いづらさや、意味から解き放つような話法をと思いながら未だそれがどのようなものなのかを言葉にできなずにいます。もどかしさ。そう。そんな感じ。
機械式時計に癌が見つかって全人類が東を目指す
あの角を右だと叫び駆けていく猫のことばが分かるはつなつ
耳鳴りを形にすれば蜆蝶それは渡らなくてもいい橋
動かなくなった時計はもう時計とは呼べないね愛って呼ぶね
葉桜の下に無数の雨音が現実になるたった一滴