宇祖田都子の短歌の話

森羅万象を三十一音に

自選短歌五首

「#2023年自作短歌五首を呟く」と「2023年自作短歌拾遺」

はじめに #2023年の自選五首を呟く をやってみました。 その中での気づいたのは、「自分がどんな短歌が作りたいのかを考える余地があるということは、たぶんまだ、ちゃんと短歌に取り組めていないのだろうな」ということです。わたしは悪い意味で「アルチザ…

令和五年七月の自選短歌五首

そういえば、先月は自選してなかったみたいです。読みたい(詠みたいではなくて)短歌が作れなくて、あ~あと思うことが多い日々です。 そんな中、suiuという短歌の投稿サイトに出会い、そちらは「お題」などにこだわらず、その静謐な雰囲気に浸ることで、な…

令和五年五月の自選短歌五首

梅雨ですね。 雨の多い今年の梅雨。みなさま無事におすごしでしょうか。知人が家を失って会社の寮へ一時避難をするお手伝いをしたり、雨漏りへの対応をしたりと、気の抜けない週末を過ごしました。 さて、5月は短歌の焦点が合わないような、もどかしい月と…

令和五年四月の自選短歌五首

ゴールデンウイークは三連休がとれました。 とはいえ普段の活動範囲を超えることはなかったのですが、短歌活動としては、#いわくのつけく2 に取り組むことができました。このことについては、後日ブログにまとめようと思います。 さて、四月は自己発信の短…

令和五年三月の自選短歌五首

日に日にあたたかくなってきますね。桜は散り始めました。色彩の息吹き返す庭や畑に飛び交う虫の輝き。水の匂い。春を忘れていたことに気づかされる毎日です。 三月も好きな短歌をいくつか作ることができて、短歌の「文法」みたいなことを考えたりする月にな…

令和五年二月の自選短歌五首

2月は28日までしかない月なのですが、わりとたくさん短歌が作れてよかったです。短歌ならではの表現。に少しは近づけたかなという気がしなくもないかもしれない歌も垣間見えたり見えなかったりするように思ったりなんて、とことん弱気ではありますが、短…

令和五年一月の自選短歌五首

年が改まって一ヶ月が過ぎました。お正月気分もないまま温かな一月だったと感じています。最近、万年筆や文具の専門店が東京へ移転してしまって、閉店の一日を取材していました。それは、ミニコミサイズに編集して脱稿したのですが、いつか、身辺雑記として…

令和四年十二月の自選短歌五首

2022年も終わりましたね。 大晦日はとくに短歌三昧の素敵な一日になりました。 朝から、「大晦日108首チャレンジ」にとりくみ、夜は「CD短歌年越し2022」 【♪】リビングに螺旋階段ある家のグランドピアノみたいに謙虚 で、初めてボランティアも経験…

令和四年十一月の自選短歌五首

野村日魚子さんの『百年後 嵐のように恋がしたいとあなたは言い 実際嵐になった すべてがこわれわたしたちはそれを見た』 toron*さんの『イマジナシオン』 穂村弘さんの『ラインマーカーズ』(小学館文庫版) の三冊を購入して刺戟をうけた今月。 さらに『音…

令和四年十月の自選短歌五首

情景を描く短歌もいいし、心情をぶつける短歌もいい。短歌っぽい短歌は安心感があるし、短歌っぽくない短歌には驚かされる。言葉の実験みたいな短歌にも魅かれる。文語の格調も口語の気取らなさもどっちも好きだし、破調や自由律にもドキドキする。事実でも…

令和四年九月の自選短歌五首

空と風が秋めいてきました。 うたの日 と RIUMさんのお題 で短歌を考える毎日です。 『桜前線開架宣言』を読んで、好きな歌人の方がまた増えました。 その上で、わたしはどんな短歌を詠みたいのかぐるぐるぐるぐるしています。 それでは、今月の自選短歌五首…

令和四年八月の自選短歌五首

夏らしい夏を満喫できました。もう九月ですね。八月は、好きな短歌に指先が少し触れたような気がしました。イベントも楽しかったし、作ることも読むことも楽しむことができた八月でした。 では、今月の自選五首です。 令和四年八月の自選五首 8月8日そうい…

令和四年七月の自選短歌五首

明日(8月7日)は、CDTNK夏フェス2022開催日で、いまからワクワクしているのですが、懸念が一つ。わたしも23時から4分間の出演することになっているんですが、短歌ができていません。4分間をつかって何をどのくらいどんな風に披露すればよいかを考えな…

令和四年六月の自選短歌五首

短歌の形式だからこそ意味を成すこと。短歌の形式にして読んで初めて意味が透けてくるように作ること。散文ではとうてい通用しない配置の言葉が、短歌形式であることによって詩性を帯びること。そのとき言葉は、私は消え失せてしまうはず。そんな理想を掲げ…

令和四年五月の自選短歌五首

どんなとき、短歌を作りたくなるの? これも短歌になってしまうの? 宇祖田都子です。 5月は、わりと好きな短歌が作れたような気がしていたのです。 とくに、RIUM@R__l__U__M さんからいただく#初句 や #連想短歌 に助けられていると感じています。 自発的…

令和四年四月の自選短歌五首

このところ少しだけ、好きな短歌を作ることができるようになってきました。 兵庫ユカさんや、野村日魚子さんの歌を繰り返しよみながら短歌を作っています。 振り返ってみると、うたの日 RIUMさん @R__l__U__M の#初句 や #連想短歌 が、とても励みになってい…

令和四年三月の自選短歌五首

わたくしがあなたの事件になったならわたくしはもういなくてもいい なんて思いました。わたしは、目に留めて下さった方の事件になるような短歌を作りたいな、なんて。そうして、言葉から意味を解き放つような短歌を、と。まだまだ全然なんですけどね。 それ…

令和四年二月の自選短歌五首

短歌には「動き」すなわち「時(推移)」への感覚が必要なのかなとこのごろ思います。それは、気づきでも、予感でもいいのでしょう。「瞬間」だったり「ずっとそのようにあるわけではないのだろう」だったり、「もうずっとそのままなのだろう」だったり。そ…

令和四年一月の自選短歌五首

短歌の投稿サイト「うたの日」へ参加していて、この間「デビュー2年!」というメッセージが出てきました。まだ、2年なんだなって、不思議な気分になりました。一日、一日はあっと言う間で、一週間なんて信じられないスピードで巡っているけれど、そんな風に…

令和三年十二月の自選短歌五首

好きな短歌が詠めるようになりたいな。 ということで、遅ればせながら令和三年十二月の自選短歌五首です。 好きな短歌を五首選ぶのにさえ四苦八苦するほどに、短歌にならない今日この頃です。 12月5日あんまんにあたためられていた手からあんまんをあたため…

令和三年十一月自選短歌五首

金目鯛おいしいですと昨年の自分が書いたハガキを隠す 『 自由詠 』 普通ならクロワッサンのはずだけど普通じゃないからクイニーアマン 『 普通 』 僕たちは大きく失速した光だから身体はこんなに遅い 『 速 』 ほぼ皆既月食を見た夕食の前に菓子パン三個も…

令和三年十月自選短歌五首

短歌って難しいなと、このごろとくに感じています。 作りたい短歌の尻尾を追いかけて 短歌に尻尾があってもいいの? という気分の十月でした。 茶柱の立てば喜ぶ人といてラ・ムーは菊池桃子のバンド 『 解散したバンド 』 ものすごく大きな犬が引っぱって曲…

令和三年九月自選短歌五首

鉄棒の補助する人が体育館を出るとき使う洒落た靴べら 『 靴 』 フルートが微かに鳴っている午後を雨と未練が時折過ぎる ドクダミの茂る跡地はわたくしの思い出せない前世のように 透明なトワイライトに同棲は改行のない手紙のように 『 同棲 』 玉葱を微塵…

令和三年八月自選短歌五首

朝の窓背後の影はゆく夏のロマンスだつたはずの言霊 まるつけて提供臓器にまるつけて免許証裏にもっとまるつけて 『 許 』 オブラートおいしく進化しそこねて生活感のないワンピース 『 進 』 オルガンは建設途中自然保護団体からの差し入れは葱 『 然 』 た…

令和三年七月自選短歌五首

聞き取れた単語がレインだけなのは おそらくノアの方舟だから 『 レイン 』 放課後の静謐な夜は 白犀の角のタトゥーと孤独をかこつ 『 独 』 アリクイかナマケモノかの未来世に紛れ込ませておくアルマジロ 朝の窓背後の影はゆく夏の ロマンスだつたはずの言…

令和三年六月自選短歌 五首

短歌なんだから短歌を作りたいと切実に思いながら短歌ではなく散文で、文意で伝えようとしてしまう。言葉に馴れすぎているという自覚。もっと言葉の使いづらさや、意味から解き放つような話法をと思いながら未だそれがどのようなものなのかを言葉にできなず…

令和三年五月自選短歌 五首

踊り場の窓から薔薇を投げ捨ててあなたはどうせ幸せになる (屋上獏部 ナナコへ) 母死にしあとも毎年薔薇の咲く庭を夢見る 幸せになる 『 薔薇 』 #うたの日 Yシャツのカフス部分にアイロンを押しあてるとき蠢く何か 暮れなずむどこかの星も午後六時塩とコ…

令和三年四月自選短歌五首

令和三年四月自選短歌五首 終日の座学を終えたパイプイスたたまれた後しばらく温い 『 座 』#うたの日 一筋のラインが窓に現れて受胎告知はたしかな奇跡 『 受 』 #うたの日 帰途の吾が背後は異郷ふるさとも旅の途上のまほろばなれば #異国短歌応募歌 銃・翼…

令和三年三月自選短歌五首

「小田原」を「ホニャララ?」と聞き返されたときにわたしが咥えてたもの 『 ホニャララ 』 #うたの日 一本のうどんが気炎吐きながら角を曲がっていく春の昼 『 うどん 』 #うたの日 星空のままにしておくガラス製ジグソーパズルのところどころは 約束をすっ…

令和三年二月自選短歌五首

アルファベットチョコは義理でも律儀にもイニシャル揃えて渡したりして 書き記す自分の名さえ新鮮な なにも諦めないと決めた日 缶詰の白桃が好きだった父の骨壺を溢れる頭蓋骨 コンビニのレシートにある支店名 気にするほどのことじゃないけど シロナガスク…