宇祖田都子の短歌の話

森羅万象を三十一音に

屋上獏部 Ⅱ・Ⅲ

うたそら(千原こはぎさん製作)は第二号・第三号と発行が続いていて、私はこちらの八首連作の部に、屋上獏部にて参加しています。

うたそら。どうか是非お手にとって読んでいただきたいです。ネプリ、ダウンロードなどはこちらのリンクからどうぞ。http://kohagiuta.com/utasora/03/

今回は、屋上獏部Ⅱ・Ⅲの計十六首をまとめておきます。

    Ⅱ

五限目にロマノフ朝が崩壊し部長がこない屋上獏部

噴き上がる桜吹雪がバクの背を薄紅色に染めるから駄目

踊り場に鏡の破片散乱し全てに犀のお尻が遠い

屋上で部長と二人捕虫網掲げて獏の捕獲に励む

この時期は桜の蕊を中庭の池に浸したものを与えよ

教科書は持ち込み禁止屋上の獏部部室は絶対王政

いつまでも顔と名前が一致せぬ獏部顧問は古文の講師

来歴は不明トリセツ見当たらぬバクリンガルという電子機器

    Ⅲ

かたつむり注意の掲示吹き飛ばす青葉嵐に真夏の予兆

ドアノブが引っ張るたびに取れる日に受信している微弱な電波

屋上が水面と化す梅雨の晴れ波紋はバクの産声だから

板書するリズムで分かる先生が温めている卵の中身

獏部にてラ行変格活用のように口承されてる哀歌

踊り場が浮遊するのは中庭の池の形が透けているせい

機関紙の編集会議七月の特集記事はバクとピロティー

夏服の胸ポケットにシャーペンの2ミリの芯とシュプレヒコール

以上です。

屋上獏部は継続していきたいと思います。