宇祖田都子の短歌の話

森羅万象を三十一音に

屋上獏部 Ⅳ・Ⅴ

はじめに

『うたそら』という千原こはぎさんが主宰の各月発行の短歌誌の、8首連作の募集のコーナーにて、『屋上獏部』というタイトルの短歌を、毎回投稿しています。

2022年3月初旬に第7号の発行が告知されています。一周年、おめでとうございます。

kohagiuta.com

わたしも、第7号にむけて、屋上獏部 Ⅶ の八首を、これから作るところです。それに先立ちまして、Ⅳ・Ⅴの16首をまとめて、作る際の参考にしようと思います。Ⅰ~Ⅲまでは既にこちらのブログにまとめておりまして、Ⅵはこれから作るⅦと一緒に、またまとめます。完結させることを考えていないので、こんな風に、ずっとまとめていけたらいいなと思っていますし、初出もずっと『うたそら』誌上でできたらいいなと思います。

屋上獏部 Ⅳ

学校は獏ではないが獏が棲む熱くて昏いぬかるみだった

屋上という感情を象って獏が創られたという神話

屋上を地下一階と呼ぶときに獏と夢とはもっとも近い

屋上にゴロゴロしてる獏たちを塹壕として死守すべきもの

屋上をドクターヘリに見下ろされ生理食塩水味のグミ

これよりももっとやわらかいんだよと獏の足裏をつっつく先輩

肩甲骨から尾骶骨まで覆いバク柄になる日焼け大会

かき氷急いで食べてキーンとした顔してみんな獏にそっくり

 

屋上獏部Ⅴ

パリパリのクロワッサンは犀に似て夢見るものは硬くて脆い

先輩の夢の証は秒針と長針のない懐中時計

〈バク修理・オーバーホールいたします〉もう今はない市外局番

屋上に穴がぽっかり一つありバクは単孔類かもしれず

ウリ坊の繭がフェンスを埋め尽くし夕陽に透ける夢に似たもの

木星が大きく見えた夜のバスバクの蹠はやわらかかった

顧問から指示書が届き折り紙でせっせと折っているだまし船

エコーこの屋上に来てナルシスの夢の水面を乱しておくれ