屋上獏部 Ⅹ・Ⅺ
千原こはぎ さん編集発行の「うたそら」の八首連作のコーナーへ毎回送っている
『屋上獏部』を、自身のために定期的にまとめています。
今月初め(元旦!)に「うたそら12」が発行されました。
毎号、読み応えたっぷりの短歌誌です。
さて、「うたそら12」ということは、屋上獏部もⅫでした。12号×8首=96首になったというわけで、次回で100首を越える計算です。
わたしは『屋上獏部』という連作と通じて、一体なにを描いてきたのか改めて考えみたいと思いました。
それでは、アーカイブ Ⅹ・Ⅺ をまとめておきます。
屋上獏部Ⅹ
夏休みピエロが怖い登校日部長がくれた異形のピアス
三ツ折のスカート裏に少しだけ菫色したミクロコスモス
肌色のクレヨンだけでできている獏の神社のおみくじは「喉」
真っ黒な虹の真下で噛み締める薬草園に光の長さ
渦を巻く銀河宇宙が落ちてきた弁当箱の蓋ですくった
鰯雲みたいに床に敷き詰めた炸裂しないモザイクタイル
チョコレート通り過ぎてくコオロギの髭と足とを入れ替えながら
屋上獏部 Ⅺ
唐突に踊り場のある階段に読んだ形跡のないバイブル
「言葉おほければ罪なきことあたはず」大きな岩の夢を見る犀
ひつようなくんれんをするオルゴール閉じてはじめる指きりげんまん
教会とパン屋が見える屋上に唯一つながる非常階段
まぼろしのサイコロ二ついつまでも転がり落ちるラセン階段
本名は覚えてませんクリスチャンネームはミカといいます 母です
煙突の内と外とを行き来するメビウスの輪みたいな読書
以上です